2012年2月29日水曜日

THE CONNECTED HARBOUR

日本に帰ると意外と困るのが、無料Wi Fiスポットを探すこと。スタバや他にカフェに言っても、DocomoやSoftbankと契約していれば使えるのですが・・・・と言われることが多い。香港にいると四六時中インターネットにつながった状態なので、いきなり切り離されるといろいろと不便であり不安になる。


ちょっと前にBCGとGoogle共同プロジェクトで、香港のインターネット事情に関するレポートが発行されたことがあり、確かHKUSTからのアナウンスもあったので、発行に合わせて開催されたパネルディスカッションを見学に行ったことがあった。






レポートによると、インフラの整備度やアクセスについては、香港は韓国や日本に遅れをとっているのだけど、個人的な体験からは、海外からの訪問客にとってのインフラの利用しやすさという観点から見ると、香港は日本とは比べ物にならないほど進んでいると思われる。地下鉄の駅、バス、エアポートエクスプレス、マクドナルド、スターバックス等、いたるところでWi Fiが提供されており、プレペイドのサービスに申し込めば、街中に張り巡らされているPCCWのWi Fiサービスが利用可能だ。図書館などの公共施設、公園、スポーツグラウンド、そしてなぜか生鮮食品を扱うマーケット、街市でも政府の無料Wi Fiが利用可能だ。Wi Fiのカバー率では香港は圧倒的に日本より大きいことは間違いなく、このあたりは小さな行政区の大きな政府の本領発揮というところか。

おまけに、香港ではiPhoneのテザリング機能が使えるので、データ無制限プラン(それでも月額3000円もしない)に入っていれば、現実的には24時間Wi Fi環境下にあると言っても過言ではない。そんなインターネット中毒に非常に近いところまで行ってしまった人間が確実に増えている中、インターネット環境、特にWi Fi環境が整っているかどうかは、都市の競争力の源になっていくのではないかとふと思った。特に香港のように流動人口の多いところは、外部から来る人間にやさしいインフラ作りは欠かせないと思われる。

冒頭のレポートにもあるように、インターネットの産み出すお金は非常に大きなものになってきている。インターネットにさえつながっていれば、より充実した情報収集ができてビジネスのディールにつながるっていたのに。インターネットにつながってさえいれば、探しているお土産が見つかって買うことができたのに。インターネットにつながってさえいれば・・・・・。いくらでも例はあげられると思う。そういう意味で、ビジネスセンターとしての位置づけを固めていくために、インターネットインフラの構築は重要なテーマであり、その点香港は実にうまいことやっているのではないかなあと思う。東京は、どうだろう。

2012年2月7日火曜日

缺宅男女

香港のテレビドラマを見ることはこれまであまりなかったのだけど、現在やっている「缺宅男女」というドラマはこれまでにないほどはまっている。
そもそも香港のドラマは毎晩放映するので、追いかけるのがしんどい。
当然作りは安っぽく、日本のドラマとは比べ物にならないのだけど、一度見始めると続きは翌日なので、ついつい見続けてしまう。




缺宅男女」はいくつかのストーリーがからみあいながら並行して進んでいる。結婚間近の若いカップルと、不動産王との三角関係、そして不動産王の妹を巻き込んだ四角関係への発展、不動産王の奥さんにもバレて・・・。また、彼女の方の兄弟夫婦それぞれのマイホームを夢見ながらの悲喜こもごものドタバタが次々と起こる。
嫁姑問題や不倫、義理や人情まで盛りだくさんなのだけど、基本的には比較的低所得層の家族と大金持ちの家族の間での格差が浮き彫りになるような作りになっている。

香港のドラマは、通常一般よりは明らかにお金持ちであろう人々の話が多いような気がするのだけど、今回は2LDK(と思われる)ぐらいの小さいアパートに家族9人で住んでいるような人々の生活が描写されていて、彼ら彼女らのマイホームを手に入れるという夢と次々と襲いかかるアクシデント、平凡な幸せと超お金持ちの誘惑の間で迷い惑わされる素朴な若者の葛藤が描かれているのが興味深い。

MBAのクラスメート等は別として、一般的には香港でマンションを買うというのはまだまだ夢だということが多い。一般的な収入レベルは日本より低いのに、マンションの値段はむしろ高かったりする。
香港はアジアでも所得格差の激しい都市で、億万長者がうようよいるのに、平均所得にすると日本の半分ぐらいになってしまう。ForbsのBillionaires Rankingのトップ200に日本人は5人しかいないのに、香港人は8人ランクインしている。人口は10分の1以下なのだから、人口あたりの富豪の多さが際立つ。その一方で香港人の月給の中央値はHK$18,000(18万円)、最頻値を見るとHK$10,000(10万円)~HK$14,999(15万円)ぐらいなのだ。

自分の住む香港の外れ、離島地区に分類される東涌でさえ、2LDKで3000万円を下る物件を見つけることは難しい。また、香港の不動産は中古でも値下がりしない。築20年以上経っていても、新築当時と変わらない値段で取引されている不動産も少なくない。太古やHungHom等、日本人に人気のエリアも、一見くたびれたマンションでそれほど広いわけでもないのに億ションだったりということはざらなのだ。なのでマンションは手堅い資産としても人気で、身近にも同世代で既に2件持っているという人もいるし、何十件も保有して貸し出しているお金持ちだって珍しくない。

昨日放映されたシーンで、比較的低所得な方の家族の兄弟の一人が、奥さんと言い争う一幕があった。結婚前に、猛烈にアタックを仕掛けていた彼女の強引な勧めに従って同じ職場で働くことになったのだけど、今回公共住宅の申請にあたって家計の収入がHK$16,000を超えていてはいけないということになって、二人合わせるとHK$22,000となってしまう二人が、どちらが会社を辞めるかの言い争いになるのだけど、給与は奥さんの方がHK$13,000、旦那の方が少なくてHK$9,000。少ない方が辞めべきやら、男のメンツで辞められないやら、大人気ないせめぎあいが続くのだけど、まさにこのHK$9,000からHK13,000前後というのは、上でも紹介した香港人の月給の最頻値ど真ん中ストライクなのだ。香港では多くの人が毎晩、自らの生活と重ね合わせて「缺宅男女」を見ているに違いない。

ちなみに「缺宅男女」とは、「マイホームの買えない人々」みたいな意味なのだけど、広東語で発音すると「決擇男女」とも聞こえる。こちらは「選ぶ人々」みたいな意味にもなるので、同音異義語で言葉遊びをしているような感じらしい。マイホームを夢見る人々の選択、恋愛、決断、戸惑いといった意味が4文字に凝縮されている。漢字は奥が深い。