2013年2月17日日曜日

旧正月に不動産価格の高騰を憂う


つい先日新年を迎えたばかりなのだけど、香港は旧正月がメインなので、先週末から5連休となった。
特に予定もなかったので、大晦日に銅鑼湾のビクトリア・パークの花市に繰り出し、正月二日のビクトリア・ハーバーの花火を鑑賞したり、テレビの正月特番をだらだらと見たり、知人の家に"拝年"と呼ばれる正月の挨拶に行ったりと、何年か振りに旧正月の至極まっとうな過ごし方を楽しんだ。









さて、初四と呼ばれる正月四日にあたる先週水曜日、MBAの同級生に招待され、彼の新居を訪れることになった。彼の家は、烏溪沙という地下鉄馬鞍山ラインの一番端っこの駅付近にあり、繁華街の尖沙咀からだと約1時間はかかる。この辺り一体は馬鞍山エリアと呼ばれ、新興住宅地で2000年代後半から新しいマンションが次々と建ち、現在も建築中のアパートがいくつかある。

烏溪沙

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彼の住む銀湖天峰というマンションは、この辺りでもハイエンドの豪華なマンションで、
目の前に吐露湾が広がるハーバービューの素晴らしい眺めなのだけど、その視界の一角には既に新しいビルが建築中で、せっかくのハーバービューも半分ぐらいになってしまうそうだ。

ここ数年の香港のマンション価格の高騰は激しく、ここまで郊外に来ても、マンションの購入は簡単ではない。このマンションも、122月は1スクエアフィートあたりHK$6,400前後だったが、現在ではHK$7,500を越える値段がつく。たった一年で約20%も値上がりしていることになる。香港の面積の単位はスクエアフィートなので、一般的な700スクエアフィート(約65平米、20坪)のマンションだと、軽く6,000万円を越える。

#香港の家探しに重宝するGoHome.com.hk

これは坪単価でいうと310万円を超え、世田谷区、新宿区より高く目黒区や品川区に匹敵する高さとなる。ポイントは、これがいわゆる中心地を認識されているエリアから地下鉄を乗り継いで1時間もかかる比較的不便な場所の話であるということで、首都圏で例えるならば、東京を飛び出して千葉県流山市や埼玉県戸田市ぐらいのイメージだ。なのに、マンションの値段は中目黒レベル、という異常な状況になってしまっているのが今の香港。

ダウンタウンから1時間の距離でこの値段なので、中心地でマンションの購入をしようと考えると、億の単位になることは覚悟しなければならない。香港も格差社会で稼ぐ人はとことん稼ぐが、中央値を見ると、個人の月給でHK$12,000(14万円強)、家計でHK$20,000(24万円)ぐらいなので、6000万のマンションを買おうとすると年収の軽く20倍になってしまう。一般市民にとってマンションの購入が夢のまた夢となり、香港政府の住宅施策に対する不満が爆発している。政府もバブル的な高騰を防ぐため、値上がりへの懸念を表明したり、必要な頭金のパーセンテージを上げたり、マンション購入時の印紙代を上げるなど、沈静化に努めているけれど、中古住宅市場の取引量が少し減った程度で、相変わらず新しいマンションは飛ぶように売れ、値段が下がる様子はない

新しいマンションはどれもクラブハウス、プール、BBQ施設やスパを備えた豪華な作りとなっており、跳ね上がった値段を正当化するようなプレゼンテーションに力を入れている。香港のマンションはやたら名前が立派で、凱旋門とか、帝峯皇殿とか、尚豪庭だとか、威厳たっぷりのありがたそうな名前が使われることが多いが、日本人的には豪華な施設やサービスを備えたマンションより、質実剛健で落ち着いたマンションがいいのだけど、それを探すのは香港では至難の業だ。

ちなみに、在住日本人にとっては、販売価格よりも賃料が気になるところだけれど、銀湖天峰を借りるとすると最低でHK$15,000(約18万円)からが相場で、それなりの収入がなければとても借りられるものではない。もちろん地区に加え広さや築年数も関係してくるので、探そうと思えばHK$10,000前後でも見つかることは見つかるのだけど、それでも自費で負担しようと思うと大きな痛手となる。

自分が香港に来た当時は、やや不便な場所だけど外国人に人気の高いDiscovery Bayで、一人向けのスタジオタイプのマンションをHK$4,000で借りていたけれど、そんな家賃でマンションを探すことは今はもはや不可能になってしまった。かつて住んでいたマンションの今の家賃を調べてみたらHK$13,000に届こうかというところまで上がっていた。8年の間に軽く3倍を越える値上げになってしまったということだ。