2015年2月22日日曜日

三つ星の謎

香港に7年間合法的に居住すると永久居民の資格を得ることができる。香港に来た当初は7年なんて相当先と思っていたものだけど、いつのまにか滞在が長くなって、7年が近づくと、周りからも「もうすぐ永久居民だね」などと言われるようになり、なんだか永久居民になることが一つの目標のようになって急に気になるようになったものだ。

永久居民になった後、しばしば香港人から「三ツ星になったのか。」と言われることがあった。「星」とは何かというと、正確にはアスタリスク(*)のシンボルで、香港人のIDカードにはこの*が三つ印字されている。多くの香港人が誤解をしているは、外国人であっても、永久居民になれば、この3つの*がIDカードに印字されるようになる、ということだ。ところが実際には、自分のIDカードの、香港人に言わせると三ツ星が印字されているはずの場所には、味気ないアルファベットのAとOが印字されている。

移民局のウェブサイトによると、Aは香港での居住・滞在の権利(Right of Abode)を持っていること、Oは生まれた場所が香港以外の場所であることを意味している。

【参考】
http://www.gov.hk/en/residents/immigration/idcard/hkic/smartid.htm

このAのシンボルのおかげで、永久居民となった外国人は、香港に期間無制限で滞在することができ、学校に通ったり、仕事をするのも自由であり、また配偶者や両親のビザのスポンサーとなることも可能となる。

さて、ではアスタリスク(*)が意味するところは何かというと、下記のように定義されている。

The asterisks indicate that the holder is eligible for a Hong Kong Re-entry Permit: *** for adults aged 18 or above; and * for minors aged between 11 and 17.
http://www.gov.hk/en/residents/immigration/idcard/roa/icsymbol.htm

この記述によると、*そのものは、単純にRe-entry Permit(回港證)を申請する権利を有しているとしか定められていない。三ツ星は、その中でも、IDの保持者が18歳以上であるということを意味しているに過ぎない。

そして、このRe-entry Permit(回港證)の申請資格の定義を確認してみると、

HKSAR Re-entry Permit
Chinese citizens who have either acquired the right of abode or been granted unconditional stay in Hong Kong; and
persons not of Chinese nationality who have been granted unconditional stay in Hong Kong but cannot obtain national passports or travel documents of any other countries or regions.
http://www.gov.hk/en/residents/immigration/traveldoc/permit/eligibility.htm


香港永久居民資格を得た中国公民であるか、他のどの国のパスポートも取得できない中国公民以外の者、となっている。つまり、日本人は日本国籍を保持している限り、このRe-entry Permit(回港證)を申請できる資格を持つことはできず、すなわち、いわゆる三ツ星もがIDカードに印字されることもない、ということになる。

さて、多くの香港人が、香港永久居民のステータスを取得することと、3つのアスタリスクがIDカードに印字されることを結びつけて考えてしまうのは、香港生まれの香港人は必然的にRe-entry Permit(回港證)の申請資格を保持し、18歳以上の香港人のIDカードには、かならず3つのアスタリスク(*)が印字されているため、外国人が永久居民になった場合には、同じように印字されるはずだという単純な誤解に過ぎないと思われる。

永久居民になって以降、これまでで唯一といってもよい特典は、2011年に香港政府が市民への6000ドルの支給を決めた時に対象となったことだが、調べてみると、新幹線乗り放題のJapan Rail Passや、北海道の高速道路が割安で使えるHokkaido Expressway Passなどは、外国の永久居民の資格を取得した日本人でも利用が可能ということなので、機会があれば是非利用してみたいと思う。




2015年1月7日水曜日

大東山初日の出とアウトドアブームの予感

2015年、元旦は地元ランタオ島の大東山での初日の出鑑賞に出かけることにした。
大東山は高さ869mで、香港内では大帽山(957m)、鳳凰山(934m)に続く第三番目の高さを誇る。

香港の元旦の日の出は74分。
大東山は登ろうと思えば、自宅からハイキングを始めることもできるのだけど、
朝早い時間ということもあり、実質の登山口となる伯公坳まではバスで行くことにした。
6時の梅窩行き始発バスに乗って約15分、そこから登山を始めると、日の出が見れる場所に到達するのはギリギリ7時といったところ。

伯公坳から大東山への登山を始めると、伯公坳を挟んで向かい側にそびえ立つ鳳凰山が頂上まで良く見える。
実は鳳凰山も日の出鑑賞スポットとしては有名で、まだ暗い中、登山する人や頂上で日の出を待つ人々の灯す明かりがチラチラと見えていた。

640分頃まではかなりのかなりの暗闇で、懐中電灯を頼りに進むことになるが、
日の出の15分ぐらい前からは東の空が白み始める。



頂上まで行けば、丁度東の海から上がる太陽が見えるはずなのだけど、
そこに至るまでは、大きな峰が邪魔をして日の出の瞬間が見えるスポットがない。
迫り来る日の出の時間を気にしながら進むと、前方に複数のテントと立ち並ぶ人が見えてきた。


時間は既に74分だったが、水平線から少し上までは雲が漂っていたので、
頂上付近にたどりついた時には、丁度太陽がその雲から顔を出す瞬間だった。








登っている間には一人も見かけなかった登山客が、山頂付近には大勢おり、
立ち並ぶテントの数から推測するに、かなりの人が前夜から山頂付近でスタンバイしていたようだ。

さて、この大東山の山頂付近には、爛頭營と呼ばれる石造りの小屋がいくつも建設されている。







1920年代に、外国籍の宣教師によって建てられたようで、
一時期には70人収容できる大きな食堂が運営され、
水や電気の供給もあり、一日二回の郵便まで届くなど、かなり栄えたこともあったようだ。
現在は管理する団体に申請すればいくつかの小屋の内部には入ることができるようだけど、
水や電気の供給はなく、宿泊したい場合はフル装備のキャンプグッズが必要な状況だ。

ところで、2015年、実は香港ではアウトドアブームが来るのではないかと思っている。
もともとハイキングやBBQは香港人の中でも人気のアクティビティだったが、
20代の若い世代では、キャンプやシーカヤック、バックパック旅行を楽しむ人が増えているように感じる。
去年後半には、日本のいわゆる山ガールをそのまま名前にしたGo! Yama Girlなんてテレビ番組まで放映されていた。
Go! Yama Girl

先日のオキュパイセントラルの時も、どこからこんなにテントが湧き出てくるのかと思ったものだけど、特に真剣に向き合っていたのも10代、20代の若い世代、意外と、プロテストの原動力となった抑圧的な管理や偽善のはびこる政治への嫌悪感、貧富の格差拡大に伴うエスタブリッシュメントへの反発、清廉さと公平さを求める傾向と、アウトドアブーム(あるとすればだけれど)にも影響していると思われる原点回帰、自然回帰といった流れは似ている部分があるのかもしれない。

もし香港でハイキングやキャンプを始めたいと思った場合には、
きっと下記のアウトドアグッズショップでだいたい必要な物は揃うはず。



欧米系のブランドも結構充実している一方で、日本ブランドの製品は3割から5割ほど割高になっていることが多い。
The Overlanderはいつ行ってもかなりの人で賑わっている。旺角店は間違いなく香港で一番大きいアウトドアショップだ。
RC OutfittersにはTritonという独自ブランドと思われるアウトドアグッズが売っているが、
格安な値段だけに、品質もイマイチと思われる製品が多い。
日本の製品は昨今の円安でもあまり値段が調整されないので、
日本で買った方が確かな品質の物をリーズナブルに入手できるのは間違いない。

ちょうど今週のSouth China Morning Postに東涌からのハイキングトレイルについての記事が紹介されていた。天気の良い週末は既に人で溢れてはいるが、今週末はさらに多くの人が東涌に押し寄せるかもしれない。

http://www.scmp.com/lifestyle/health/article/1674168/tung-chung-gateway-many-great-running-trails