2014年8月10日日曜日

中国格安携帯の実力

彼の抜擢は突然だった。
前任が溺死という衝撃的な最期を遂げたことにより、
数週間ただいつ来るともわからぬ出番を待っていた彼に、
思いもよらぬ早い段階でお呼びがかかった。
物珍しさとコストパフォーマンスだけが取り柄だと言われ、
使われもしないうちに売り飛ばされそうにまでなっていた彼が、
突然エースの座を任されることになったのだ。

今年6月、999ドル(約1万2千円)で物は試しと購入した中国スマホのに、

こんな形で助けられるとは思わなかったが、
誤って一緒にプールに飛び込んでしまったNexus 5程とは言えないものの、
これまでのところ必要十分以上のパフォーマンスを示してくれており、
スマホにかけるべきコストの概念を一新させてくれている。





実はこの香港でもなかなか入手が難しい状況でまだ希少性があり、

日本のテック関連のウェブサイトでも取り上げられていたこともあり、
入手後一時はYahooオークションで売れるのではないかと思い試していた。
ところが、1万5千円ぐらいで、そこまでプレミアムを乗せていないのにも関わらず、
なかなか買い手がつかずに売れずのまま数週間が過ぎてしまっていたのだ。

突然のアクシデントだったこともあり、
当初はたいして期待せずに使い始めたのだけど、
iPhoneの5分の1、Nexus 5 の3分の1以下という価格を感じさせないぐらい、
必要十分以上の活躍をしてくれている。
アップルが目指す技術・デザイン的な最先端とは異なる方向かもしれないが、
ある意味世界のほとんどの人が必要としているのはこの程度の携帯かもしれないと感じた。

意外に良かった点
1.5000ドル以上もする貴重品が常にポケットに入っているという緊張感から解放される

2.傷ついても999ドルだとあきらめがつく
3.壊れても999ドルならショックが少ない
4.なくしても999ドルだとまた買えばいいやと思える
5.電話、メール、ネット、Facebook/Whatsappが普通に使える。(個人的にはこれができれば携帯としてもう十分)

物足りない点
1.GPSの反応が鈍い。現在位置を特定するまで数分かかることがある
2.多くのタブを開くとブラウザがフリーズすることがある。キャッシュをクリアすると一時的に改善する
3.日本語の情報が少ない、が意外に英語の情報は充実している


紅米を使い始めたばかりではあるけれど、
世の中には中国を中心に1000ドル近辺のスマートフォンがかなり出始めてきており、
今注目しているのは、中国・深センの会社が作っている。One Plus Oneという携帯電話。

Nexus 5キラー端末として日本のメディアでも紹介されているけれど、
端末を入手した人から招待を受けなければ購入ができないという、
手に入れることがまだ非常に困難な状況が続いている。

OnePlus Oneが高スペック低プライス過ぎてNexus 5霞む
http://www.gizmodo.jp/2014/04/oneplus_onenexus_5.html

紅米も、ウェブ限定販売で、限られた台数を早い者勝ちで買わせることで希少性を演出していたけれど、周到な準備と粘りがあればまだ買える気がしたけれど、このOne Plus Oneは周りに入手した人がいなければ手も足も出ないので、もやもや感がつのる一方だ。早く生産が軌道に乗り、多くの人が購入できるようになって欲しい。

ところで、プールの水に30分以上も浸かっていた前任のNexus 5は、
その後除湿機にあてたり、冷蔵庫に入れたり、いろいろと悪あがきをしてみたのだけど、

復活することはなく、そのまま永眠されたのでありました。




2014年7月13日日曜日

4カ国語を操るスーパードライバー

離島とカテゴライズされるランタオ島の東涌に住む自分は、街中からタクシーで帰ると通常200ドル以上(3000円程度、だけど香港ではタクシー代としてはかなり高い方)もするためほとんどタクシーに乗ることはない。ほんのたまに、どうしても利用しなければいけない時は、流しのタクシーではなく、ある番号に電話する。と、通常よりも割引の固定料金でのせてくれるタクシーを呼び寄せることができる。違法なのか合法なのか未だにわからないのだけど、かなり組織化されているようで、携帯電話を運転席の周りに4つも5つも並べて、専用のAppsを駆使してグループ内のドライバーとコミュニケーションをとりながら、顧客からのオーダーをさばているようだ。

そんなわけで、顧客が後ろに乗っているにも関わらず、ドライバーはだいたい他のドライバーや顧客と電話で話しながら運転していることが多い。Bluetoothを使ったハンズフリーのツールを使って話しているので、最初の頃は自分に話しかけているのか、独り言を言っているか等、ドキドキしたこともあったものだ。

そんなある日、どうしてもタクシーで街中まで出なければいけないことがあり、仕方なくこのタクシーを呼んでみた。通常200ドルぐらいかかる九龍の中心地までも、このタクシーなら150ドルで行ってくれる。

乗り始めてしばらく、いつものようにドライバーは顧客からの電話を受けては、ある時は自分で後にピックアップに行く約束をしたり、ある時は他のドライバーに振ったりと絶え間ない問い合わせをテキパキと処理している様子だった。乗ってる方からすると運転に集中してもらいたいものだけど、合法かもわからないサービスを利用している後ろめたさもあり、そんなことはちょっと言えない。だいたい広東語でほとんどわからないので、別に注意も向けていないのだけど、突然ドライバーが日本語を話しだしたのには驚いた。「ハイ、ハイ」、「ナンジデスカ?」、「ハイ、ハイ」(常に2回言う)「ドコイク?」、「ダイジョウブ、ダイジョウブ」、「アアッ?」(ここは通じなかったらしい)「バンゴウネ、89XXヨ。」、「ジャネ、バイバイ」。どうやら会話(商談)が成立したらしい。

香港人は広東語がネイティブだけど、基本的にオフィスワークやっているような人たちは、だいたい英語も北京語もそこそこ話すし、それに加えて、日本語や韓国語、フランス語なんかの第四外国語を話す人も結構多いので、もうあまり驚かない。しかしタクシードライバーで日本語話すってのは初めて会ったし、初めて聞いた。気になって聞いてみると、実はそんなにペラペラではないらしい。しかし、かかってくる電話はタクシーの予約の話に間違いないだろうし、そしたら話す内容なんて、時間、場所とタクシーのナンバーぐらいでほとんど足りるので、たいして話せなくても問題はないのだろう。

ちなみに自分はいつも英語で電話をかけて、ほとんど問題ないし、恐らくこの地区であれば中国人もたくさんいるし、北京語だって、予約受けるぐらいは余裕でしゃべるはずだ。日本のタクシードライバーのようにお行儀も良くないし、車だってちょっとヨレヨレ、運転も荒いし、何しろしゃべりっぱなしでうるさい。こうしたサービス面では適わないのだけど、言葉は3つも、4つもしゃべるので、お客が中国人だろうと、欧米人だろうと、場合によっては日本語しかできない日本人であろうと、なんとかコミュニケーションが取れるという強みがある。現在日本に来る外国人で、不安なくタクシーを乗りこなせる人がどれくらいいるだろうか。香港も不安がないわけではないが、外国人にとってのコミュニケーションのハードルは日本とは比べ物にならないくらい低い。外国語は子供の頃からの教育が大事だなんて言うけれど、あのタクシードライバーはきっと仕事を始めてから必要に迫られて、もしくはなんらかのきっかけで日本人を乗せたことから日本語の勉強を始めたに違いない。それでなんとか最低限のコミュニケーションができるぐらいにはなるのだから、2020年の東京オリンピックを見据えて、東京のサービス業従事者は、今から本気で英語を勉強すれば、それまでになんとかなる、必要十分な語学力は身に付くのではないかと思う。









2014年5月12日月曜日

香港二回目以降のあなたに

年間2000万人もの観光客が訪れる香港だけれど、その多くを占める中国人の目的は大抵の場合はショッピングである。会社近くの広東道では、それこそ両手に紙袋を5つも6つもぶら下げている漫画のような光景がリアルで見れる。

歴史ある文化遺産が多いわけでもなく、雄大な自然を楽しめるわけでもない(本当はけっこうあるのだけど、観光客向けではない)香港なので、日本人や韓国人の旅行客も、ショッピングや食事が主な目的になりがちではあるけれど、もし二回目以降の香港滞在であるならば、是非一度訪れて欲しいのが、香港歴史博物館である。
尖沙咀東エリアに地味に佇むこの博物館、常設の"The Hong Kong Story(香港故事)"がなかなか侮れない。
古代から近代までの香港の様子を時系列に展示しており、映像、ジオラマ、実物大模型を使った、ダイナミックな展示特にお薦めは近代の実物大で再現された香港のローカル家庭の屋内や、乾物や薬を売る商店、床屋、洋服屋、映画館、銀行、昔のトラムまで展示してある香港近代のコーナーで、
昔の香港に迷い込んだ感覚が味わえる程、精巧な展示と雰囲気作りに成功している。
1800年代後半から近代まで撮影され保存されている香港の写真が展示されている」、
日本人としては、過去の歴史として、日本占領時代の展示コーナーも見ておくのが良い。
38ヶ月にも渡って日本が香港を占領していたことは、日本人には意外と知られていないように思われるが、この時代だけで一つの展示コーナーができていることからも、香港の歴史に於いては非常に重要な節目となり、且つ現在も人々の記憶に残っている、記録に残していこうと努力している事実なのだ。


「今なら"Images Through Time: Photos of Old Hong Kong(影藏歲月 - 香港舊照片展)"が行われており、

と書こうと思っていたら、3週間ほども前に終わってしまっていた。
ブログネタを下書きで塩漬けにしておくと、新鮮さがなくなるどころか、腐ってしまうのも初めてではないのに、またやってしまった。


ご参考までに、いくつかの写真が見れるリンクを下記に。

http://www.utravel.com.hk/member-blog/asdf001997/ADsRYhEsA3AMIg/
http://www.info.gov.hk/gia/general/201312/17/P201312170390.htm

http://timable.com/zh-hk/event/149589

常設展示だけでも十分見る価値があるので、香港を訪れた際には是非足を運んでいただきたい。





台北不動産悲喜こもごも

少し前の週末、金曜日の午後に半日休暇を取り、週末を台北で過ごすことにした。
昔からの台湾人の友人がマンションを購入、内装が終わったので、
日本に住む共通の友人と一緒に訪ねることが大きな目的だった。

香港の不動産も相当に高い買い物ではあるのだけど、
台北のマンションもここ数年かなりの値上がりをしており、
普通のサラリーマンにはなかなか手に届かない夢になってしまっているらしい。
自分の友人は、数年前に買っていたマンションが二倍近くで売れたので、
それを元手にして、今回やや郊外の新しいマンションを購入することにしたという。
丁度結婚もしたので、旦那さんの資金と合わせて、
今回はかなり高級な物件を購入することができたとのこと。

彼等は言ってみれば勝ち組で、不動産の価格が上がる初期から中期にかけて最初に買った物件を高値で売り抜け、
その後2つ目のマンションの購入にも成功している。
近いうちに近所に地下鉄の駅もできるとのことで、
今回は2倍まではいかないだろうけど、と前置きしながら、
10年後にはまた買値より高い価格で売却することができれば、と計画を明かしてくれた。

台北のマンションがどれくらい高いかというと、
知人が購入した台北のニュータウン新荘地区の新築マンションで、
坪単価45万-50万台湾ドル(150万円-170万円)程度。
台北の繁華街まで、車で早ければ高速を使って15分程度の立地なので、
その地域でそれくらいなら悪くはないのではないかと一瞬思うのだけれど、
台湾の所得水準は、日本と比べると半分ぐらいの水準らしいので、
それを織り込むと、一般のサラリーマンにはなかなか手が出なさそうだ。

翌日、別の台湾人の友人とのランチに行くと、
そこでも話題は不動産となり、
結婚を控えて、マンションの購入を考えているけど、
なかなか決断がつかない、と漏らしていた。
彼の場合は、最近まで大学院で勉強していたし、
彼女は今も博士課程で研究中のため、
先立つ資金の心配があるけれど、待っていても高くなるだけという推測の中で、
ジレンマに駆られている様子だった。

数日たったある日、香港に戻って何気にFacebookを見ていると、
件の結婚を控えた台湾人カップルが購入したマンションの写真をアップロードしていた。
ランチを共にした後、家具を見に行くと言っていたので、
その時にはもう心に決めた物件があったに違いない。
これからはローンに追いかけられる、と悲壮なコメントも残していたけれど、
幸せそうな様子が垣間見れるような気がした。
また内装が終わった頃に遊びにでも行きたいと思う。




香港のように派手ではなく、日本人好みの落ち着いた雰囲気のマンションが多いように思う。



建物内の共有スペースには大型のキッチンも。プライベートパーティなんかが開ける、と知人はわくわくしているようだが。。。。

2013年11月7日木曜日

庶民の味方、759

香港は日本の農林水産物輸出先ではここ数年ダントツの世界一位で2012年は900億円以上の農林水産物が香港に輸出されたとのこと。
内訳を見ると、意外にも一番多いのが真珠で、2位になまこ、たばこを挟んで、3位が豚の皮と、中華料理の材料も実は日本からの輸入物だったりするのだな、というのがわかる。


菓子類や清涼飲料水でも香港への輸出額は大きく、ジャスコやユニー等の日系のスーパーは言うまでもなく、
Parkn ShopやWellcome、Market Placeといった地元系のスーパー、セブン-イレブンやサークルK等のコンビニでも日本の食品や飲料はどこでも見かけるようになっている。

ただ、日本の食品は価格が比較的高く設定されていることが多く、ちょっとしたレトルト食品や即席麺なんかでも、日本の価格と比較して、手が伸びないなんてことも少なくなかった。

そんななか庶民の味方としてここ最近猛烈な勢いで出店を続けている、日本食品を中心に販売している食料品店が"759 阿信屋"だ。名前の"759"は、この会社が上場している香港証券市場での証券コードで、"阿信"とは、日本のかつての人気ドラマ"おしん"の中国語。その不屈の精神にあやかって、商売が繁盛するように、とつけられたようだ。"759"は広東語のリズムが良く、香港人は"阿信屋"ではなく、"759"(無理矢理カタカナで書くと"チャッ、ンー、ガウ")と呼ぶことが多い。





















































どちらかというと、大通りや繁華街ではなく、比較的賃料の安いローカルのショッピングモールや郊外にお店があることが多く、その薄利多売戦略もあって、低中所得層から大きな支持を得ている。2010年に最初の店舗を出店してから、今年の9月時点で150店強を数えるまでに成長している。 ここで売られている商品は、もちろん人気のメインストリーム系の商品もあるのだけど、企画物で長く日本では売られずに在庫が残ったと思われる商品や、地方の会社が生産している、都心ではあまり見かけない製品、缶もの等では、やや凹みが目立つ製品等を安く仕入れているらしい。

さて、この"759 阿信屋"を展開している会社は、実は元々食品を扱っている企業ではなく、なんと電子部品の製造企業で、現在でも電子部品のビジネスは続けている。確か2011年頃だったと思うけれど、この会社でエンジニアとして働いている人から相談を受け、会社が食品のビジネスを始めて、自分も食品部門に異動させられそうになって悩んでいる、という相談を受けたことを覚えている。その時はまだ"759 阿信屋"の存在感はそこまで大きくなく、まさかここまで大きくビジネス展開をしてくるとは夢にも思っていなかった。 当初はインスタント・ラーメンやお菓子、飲料を中心をした商品ラインナップも、徐々にカテゴリーを増やし、生活用品、ペット用品、冷凍食品等も売り出し始めていたかと思ったら、先日遂に生鮮食品を始めたらしく、店舗に北海道産のじゃがいもやら、青森のにんにくやらが売られていた。大型の店舗は、商品の充実度としては、ちょっとしたスーパーと言っても差し支えないほどになっている。 "759 阿信屋"が人気になる前、香港には実は既に"OKASHI LAND"や"優の良品"といった、日本のお菓子を中心に販売する店舗が存在したのだけど、こんな成熟したと思われるような、食品の輸入販売という市場にも、やり方によってはまだまだ参入、発展の余地があるのだな、と目の覚める思いだ。

















実は今日になって、この会社は、今度は化粧品の小売りに進出することを発表し、株価が跳ね上がった。1.12ドルで始まった今日の相場は、終わり値で1.57ドルをつけ、40%強の値上がりを見せた。ブログを書いている場合ではなく、株でも買っておくべきだったのだ。










2013年7月17日水曜日

ピンクイルカといるいる詐欺

またまたひっかかってしまった。しかも二回も。

先週、突然会社の同僚がピンクイルカをみたいと言い出し、同僚とその知人達、総勢9名でランタオ島の大澳という場所に行くことになった。大澳とは、自分の住む東涌からバスに乗って約45分の漁村で、古くは石器時代に遡って人の住んでいた跡が残っており、宋の時代には塩田で栄えた街であったらしい。中国内戦時代には中国から逃れた移民の住処となり、現在は多くの住民が漁業で生計を立てている、香港でも特殊な地域となっている。東洋のベネチアなどと一部では呼ばれているようだけれど、まあ海南島がアジアのハワイと言われるのと同じぐらい怪しげな例えだと思う。

さて、なぜピンクイルカをみるために大澳なのかというと、この漁村から12人乗り程度のモーターボートで、近くの海まで繰り出し、ピンクイルカを見るツアーというのが漁民によって提供されているからだ。漁の片手間のアルバイトのようなものだと思うのだけど、HK$20で約20分ほど海の上をふらふらし、ピンクイルカを探し回って帰ってくるツアーだ。とは言っても、年々個体数が減っているピンクイルカを見るには運も必要で、これまで3回チャレンジして、見れたのはたったの1回。確率にしてわずか33%。今回はこれを50%のイーブンに持ち込もうと意気揚々と乗り込んだのだけど、一回目のチャレンジではまったく手応えなく、昼ご飯を挟んでもう一度頑張ったけど、やはり報われず、結果としては20%に下げてしまう悲惨な事態となってしまった。

前回別の知人と来た時に、実はもうピンクイルカはいないのに、"いるいる"と観光客を呼び込む"いるいる詐欺"に違いないとの結論に達していたにも関わらず、今回も二回も引っかかってしまい、いるいる詐欺の疑いはますます高くなってきた。まあ詐欺と言ってもHK$20に過ぎず、大澳の町並みを水の上から眺め、風を切って進むボートは気持ちよくもあったので、大きな不満はないのだけど。

お昼は元水上警察を改築したTai O Heritage Hotelでランチをし、海産物のお土産を買って、またもやバスで東涌まで山を越えて戻った。本当は東涌行きのフェリーも出ているのだけど、時間が合わず、それはまた次回。

ちなみに、本気でイルカを見たい人や、時間と資金がある人には、本格的なイルカツアーを提供する会社もある。まだ参加したことのあるという人には会ったことがないので、今度身銭を切って試してみようかと思っているけど、大澳のいるいる詐欺ツアーの約20倍ものコストがかかるので、どちらが費用対効果が高いのか、もう少し検討してみようと思う。




大きな地図で見る

2013年4月9日火曜日

低学歴国家、日本

仕事柄様々な人の履歴書を見る機会が多いのだけど、最近特に力を入れている香港人の管理者層のプロジェクトに関わると、マネジャークラスの求人に応募してくる人の多くが修士以上の学位を取得している。修士を2つぐらいとっている人も決して珍しいわけではない。

日本だと、修士課程は学士課程から継続して進む傾向が強いが、香港では決してそうではなく、一度社会に出てから修士取得のために大学に戻る人、仕事を続けながらパートタイムで取得を目指す人、様々だ。そのため、主要な大学のほとんどでパートタイムの修士課程が非常に充実しており、平日の夜、週末の時間に授業が取得可能になっている。更に、英国やオーストラリアの大学が、定期的に教授を香港に派遣して、地元大学の教室を借りて授業を行ったり、完全ににリモートでウェブベースで修士が取得できたりと、選択肢は幅広い。MBAだけを見ても、HKUST, HKU, CUHKを筆頭に、理工大学、城市大学もMBAのプログラムを提供しているし、海外大学のプログラムで香港での受講が可能なものを含めると、その数は軽く10を越えてくると思われる。単純に一プログラムあたり80人の学生がいるとして、フルタイムも含めて15のプログラムがるとすると、毎年1200人もの人がMBAを取得していることになる。やや安売りし過ぎではないかと懸念するぐらいだ。他の専門を含めると、東京より人口の少ないこの都市で、それこそ毎年何千人、もしかすると1万を越える人が修士課程を修了しているかもしれない。最近友人の一人がMaster of Science in Information Technology in Educationという香港大学の修士課程を修了した。つまり、テクノロジーをどう教育の現場で生かしていくのか、というかなりニッチなコースなのだが、それでも数十人のクラスメートがいたとのこと。彼女は今は、香港のインターナショナルスクールで、AppleやGoogleと協力しながら、子供達向けのIT教育の質の向上に努めている。

さて、こんなにも人々が修士学位の取得に熱心なのは、何も香港人が特別に知識欲が高く、勉強熱心だというわけではないと実は思う。いつも思うのだけど、日本では電車に乗っている間に本を読む人が非常に多く、会社内でも常に新しい知識や技術の習得に励む人も多く、玄人はだしの知識を持つ趣味人もたくさんいる。ただ、年功序列、終身雇用がまだ前提として認識されている日本では、社内での功績や認知は重要だとしても、外部機関での資格や学位が重要視されることはあまりないのではないだろうか。一方で、日本以上の学歴社会であり、かつ非常に流動性のある労働市場を抱える香港では、社内での昇進や昇給のみならず、転職の際にも学歴や資格は非常に大きな影響力を持つ。例えば、クラスメートの一人は、社内での昇進に必ず必要だからMBAを取りに来た、とはっきりと言っていた。彼の所属する組織では、修士を持っていることは当然で、博士課程を修了している人もごろごろといるらしい。一流の会社で出世コースを目指そうと思ったら、日本では「一応大学ぐらい出ておきなさい」だが、香港では「修士ぐらい取っておきなさい」なのだ。そうなると、修士が現実的に「役に立つのか」という議論はあまり意味をなさなくなる。もう持っていること自体が前提なのだ。まさにどんなに優秀な頭を持っていても最終学歴が高卒では一流銀行の出世コースのスタート地点にも立てないのと同じ論理だ。

なので、修士取得者である香港人は、能力的に学士出身の日本人サラリーマンより優れているかというと、もちろんそうとは限らない。仕事の能力と学歴は関連ないとは言わないが比例するものでもなく、修士を取得していなくても実戦で経験を積んだ素晴らしい能力を備えている方はたくさんいる。そもそも修士レベル、特に文系の修士では、取得したとしても何かの能力やスキルが飛躍的に伸びたりするものではなく、むしろ物事を大局から見るスタンスや事象の切り分けのフレームワークを認識し、最先端のトレンドや未知の領域への効率的なリーチ、そして人のネットワークを含めたリソースへのアクセスが得られる利点が比較的大きいように思われる。

では何が問題になってくるかというと、学歴という確立されたと言ってよいであろうフレームワークを当てはめると、海外に進出する日系企業の中では社内での逆転現象が発生する可能性が高い、ということだ。日本では東大、京大、早慶出身で社内の出世街道まっしぐらのエリートでも、海外に駐在に出てみると、現地拠点の課長・部長レベル、つまり部下になるような層に、ハーバードやケンブリッジとは言わなくても、欧米や現地のトップ校レベルの修士を取得したスタッフがごろごろいる状況に直面する。自分は気にしなくても、相手は気にするものなのだ。「今度来た日本人の上司は、日本のなんとかという大学出身みたいだけど、Master Degreeは持ってないらしいよ。」という目で見られてしまう。それはあたかも日本国内で、「技術部の〇〇は仕事はできるけど、高専の出身だから出世できないだろうなあ。」なんて高をくくっている自分たちの姿なのだ。まあ海外拠点で日本人駐在員が現地の社員と出世を争うということはないだろうけど、実は現地の社員から、自分たちより学歴が低いのに、という色眼鏡で見られている可能性がないとは言えない。総じて修士まで出た人は英語が堪能だったりするので、もし自分が英語が苦手であればなおさらである。

そんなわけで、日本企業は新卒採用の時に限らず、社員の学歴マネジメントというのが必要になってくるのではないだろうか、というのが最近考えていることだ。海外勤務の可能性が高い社員には、英語のスキルを磨かせることはもちろんのこと、修士学位の取得を目指させる。海外での修士学位の取得をサポートすれば英語も伸びて一石二鳥だ。既に韓国企業などはこういう動きがあるように思える。自分の通ったHKUSTのMBAにも、韓国の銀行から幹部候補生が何十人も送り込まれて来ていた。正確に言うと彼ら向けの特別プログラムがデザインされているようなので、MBAそのもののコースを修了するわけではないようだけれど、一応アジアNo.1と言われるMBAのクラスを含む高等教育を修了したというのは、今後アジアでビジネスを展開していく上では箔がつくのではないだろうか。もちろんこんな不毛な学歴競争になんの意味があるのか、とか、ただの学歴バブルではないか、という批判はあるだろうけど、現実的には、みんながやっていることをやらなかったらその時点で圧倒的不利になってしまうという状況になりつつあると思う。日本の受験システムは気に入らないので自分は義務教育後は独学で頑張る、と言ってみたって、大多数の人は結局は社会に受け入れられ難いのと同じことだ。ある程度は割り切って現実を受け入れ、その中でどう効率良く見栄えの良い、また希望的には実のある学歴をデザインしていくかということは、海外との関わりにおいては非常に大事になってくるのではないだろうか。個人が転職や高等学位の取得を自発的に目指す海外とは異なり、一つの企業に長く勤めることを期待される日本では、個人の希望だけではどうにもできないことなので、どうしても雇用主側のサポートが欠かせない。海外に活路を求めると腹を括った日系企業にとっては、社員教育、キャリアデザインの一環として、海外での修士学位の取得サポートというのは、検討に値するテーマではないだろうか。